夢みたもの

「ありがとう」


その言葉と笑顔に、あたしはますます顔が熱くなるのを感じた。


「お、お礼なんていいよ!」


慌てて首を振った。


「まず謝らなくちゃいけないのはこっちなのに・・・」


あたしの言葉に、葵は微笑んだまま小さく首を振る。


「本当に嬉しかったの。だから、お礼を言いたかった」


「それから・・・」と、葵は少し口籠もる。

夕日に照らされた葵の頬が、ほんの少し赤くなった気がした。


「私と、友達になって貰えたらと思って」

「え?」


聞き間違いかと思った。

葵にそんな事を言われるなんて、夢にも思っていなかった。

それとも、実は夢なんだろうか・・・?


呆然と何も返せないあたしに、葵は首をかしげた。

瞳に不安の色が浮かぶ。

それを隠すように、葵はゆっくりまばたきをしてあたしを見た。


「駄目?」

「駄目じゃないよ!?駄目なワケない!」


あたしはますます慌てて声を張り上げた。


「一之瀬さんにそんな事言って貰えるなんて、凄く嬉しい」

「本当?・・・良かった」


嬉しそうに笑う葵が凄く綺麗で、鼓動が速くなるのを感じながら、あたしは葵を見つめ返した。