夢みたもの

1ヶ月前の通夜の晩。


「一之瀬さんと話す事は出来ないかもしれないよ?」

そう航平が教えてくれたから、あたしは葵宛に手紙を持って行った。

そして、予想通り葵と話せなかったので、帰り際に受付の人に渡したのだった。


今のあたしの気持ちを素直に

今までの対応への謝罪と、母を失った葵へ精一杯の励ましを込めた手紙。


読んで貰えるとは思っていなかった。

自己満足に過ぎないから、捨てられてもいい。

読んで貰えたらラッキー。


そう思っていた手紙だから、本人に面と向かって言われると、凄く恥ずかしかった。


どうしよう・・・

何を話したら良いんだろう?


「アレは、アレはね・・・」


本人を前にして、何を話したら良いのか分からない。

大体、入学してから今まで、葵とあたしはまともに話した事すらなかった。

それなのに突然親しく話すのは、どう考えてもおかしい。


言葉はしどろもどろ。

鞄を抱えてあたふたと落ち着きのない挙動不審なあたしに、葵は嬉しそうに笑った。


「嬉しかったわ」

「え!?」


「凄く嬉しかった」そう確認するように言い直すと、葵は惚れ惚れするような笑顔を見せた。