夢みたもの

「何の事?あたし別に‥鞠子に謝られるような事されてないよ?」

「うぅん‥だって、ひなこを孤立させたのは鞠子だもん」

「え?」

「鞠子が大声で皆に知らせちゃったから‥‥うぅん、このお店の事を1年の子に話したのが原因だもん」


泣きそうな表情で首を横に振る鞠子。

あたしとユーリは困惑して顔を見合わせた。



「ねぇ‥とにかく落ち着いて?」

「‥でも‥‥」

「だって、あたしは鞠子に謝られる覚えなんてないし、さっきなんて叫んでくれてスッキリしたし‥‥逆にお礼を言いたいぐらいだよ?」


「ね?」と言って降り仰ぐと、ユーリが微笑んで頷き返した。


『ありがとう』


ユーリにノートを差し出された鞠子は、驚いたように肩を震わせた。


『僕の事なのに怒ってくれて、とても嬉しかった』

「‥叶君‥」

「ね?だからそんな顔しないで?」


あたしは鞠子に笑いかけると、奥のソファーに座らせた。


「鞠子の事、許してくれるの?」

「だって、最初から怒ってないもん」

「‥‥」

「確かに‥、鞠子と一緒に居れなくて寂しかったけど、それだって‥こっちが謝りたいぐらいだったし‥」

「‥‥」

「ね、前みたいに笑って?」

「‥‥ひなこ」

「元気な鞠子じゃないと、調子狂うよ」


あたしの言葉に、鞠子は顔をくしゃりとさせて何度も頷き返す。

そして、以前のように笑ってくれた。