夢みたもの

「ホント格好良いったら‥」


薄く頬を染めた美野里さんは、少し寂しそうに笑った。


「あの子‥‥ひなこちゃんのお友達?あの子も前から崇さんのファンなのよ?それも熱烈な‥ね」

「えっ!?」

「‥‥本当、罪作りな男性達だわ」

「‥‥」


美野里さんが指差した先。

まだ女性客を見つめて立ち尽くしている人物に、あたしは信じられない思いで声をかけた。



「‥鞠子‥?」


頬をピクリと動かした鞠子は、さっきまでの勢いを無くして肩を落とすと、おずおずとあたしを振り返った。


「‥‥ひなこ‥」

「鞠子、どうして?」


それ以外の言葉が出てこなかった。


鞠子があたしから離れてしばらくになる。

他の子みたいに、あたしに嫌味や陰口を言うわけでもなく、他のグループに入るわけでもなく‥、ただ、あたしから離れた鞠子。

葵があたしと居てくれたから‥‥必然的に鞠子は一人になっていた。

気になっていたけれど、原因が自分だと思うと声をかけられなかった。


その鞠子が、今、目の前に居る事が信じられない。


「ごめんね‥ひなこ」

「え?」

「鞠子が悪いの」


今にも泣き出しそうな表情であたしを見つめる鞠子に、あたしはますます混乱した。