夢みたもの

『どうかした?』


演奏を終えてやって来たユーリは、あたしの顔を覗き込んで首をかしげた。


『何かあった?』


ノートに綴られた言葉に泣きそうになる。


何も知らない他人が、ユーリの声について言及するのは耐えられない。

悔しくて‥

悔しくて仕方ないのに‥‥


ユーリが余りにも優しく微笑むから‥

その笑顔を見ていると涙が出そうになる。


『ひなこ?』


不思議そうに首をかしげたユーリに、あたしは軽く首を振って笑った。


「うぅん‥何でもない。ユーリが凄く格好良くて、ちょっと感動しちゃった」

『僕の演奏は、ひなこの為のものだよ』


「‥本当?ありがとう」



悔しくて‥

嬉しくて‥‥


ごちゃ混ぜの感情を抱えたまま笑い返したあたしの頭を、ユーリはただ微笑んで撫でる。


『ひなこがいつも笑って居られるように。僕の演奏はその為にある』


『その事を忘れないで』そう付け加えたユーリからは、以前は感じなかった力強さを感じる。



その時だった。