夢みたもの

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もっと自分に自信を持てたら‥

もっと強かったら‥‥

あたしは過去に囚われたりしないだろう。


もっと自由に

もっと楽しく

明るい未来だけを見つめて生きていける筈。


あたしには、美野里さんが言うように自分が変わったなんて思えない。


うじうじと悩むだけ。

誰かの助け無しには生きていけない。


それが、あたし。


「‥‥」


ホールに繋がるドア横に掛けられている鏡。

そこに映った情けない顔に、あたしは頬を叩いて気合いを入れた。


ユーリにこんな顔は見せられない。

あたしが情けない顔をしていたら、折角のユーリの意志に水を差してしまうから。


ユーリが昔みたいに心から笑ってくれるように‥‥

傲慢だけど、出来る限りユーリを支えたい。


「‥‥よしっ」


小さく気合いを入れてドアを開けた瞬間。

あたしはホールに響き渡るピアノの音に包まれていた。