夢みたもの

「ほら、他の人の邪魔になる」


航平はそう言うと、あたしをその場に残して弔問の列に加わっていった。


「あ、ちょっと待って!!」


弔問の列に加わるのも抵抗があるけれど、このまま置き去りにされるのはもっと嫌だった。


次々と訪れる人で、列はどんどん長くなる。

喪服を着た人達の中で、制服を着たあたし達は、凄く目立つ存在に違いなかった。



どうして航平は平気なの?

気まず過ぎるよ・・・

あたしがそう思った時。


「ほら?」


航平が小さく笑って手を差し出す。


「心細いなら・・・手 つないで行こ?」


もう子供じゃないのに。

そう思ったけれど、あたしは黙って航平の制服の裾を握って歩き出した。

航平と繋がっていると思えば、さっきまでの不安が少し和らいだ気がした。


読経の声が大きくなる。


「もうすぐだよ?」


航平に言われて顔を上げると、遺影とそれを取り囲むように白い菊の花で飾られた大きな祭壇が見えた。


「一之瀬さんは、お母さん似だね」


遺影を見上げながら航平が呟く。

遺影の中には、葵そっくりの着物姿の女性が、幸せそうに微笑んでいた。


「本当 綺麗な人・・・」


そう返した時。

あたしは、親族席に居る葵に目を奪われた。