夢みたもの

葵の欠席は何日も続いた。


航平の情報で、葵の母親は学校からそう遠くない病院に入院しているって知っていたけれど・・・

葵の事が気になって仕方なかったけれど・・・



あたしは動けなかった。



だって、葵の友達でもないあたしに、一体何が出来るんだろう?

一言すら話した事がないのに、葵のクラスメイトだとさえ言える?


悩んで2週間が過ぎた時。

葵の母親は亡くなった。



知らなかったけれど、葵の家は茶道の世界では有名らしい。

家元の祖母と後継者の父親に茶道を、亡くなった母親からは華道をたたき込まれた葵は、小学校までは有名な私立校に通っていたお嬢様。

母親の病気さえなければ、同じ中学に通う筈がない。

きっと、落ち着いたら違う学校に転校するだろう。



どこから聞いてくるのか、航平はあたしにコッソリ教えてくれた。


もしかしたら、友達になれたかもしれないのに。

そう思うと、あたしは自分の不甲斐なさにイライラした。