夢みたもの

「誰かに話せばスッキリするかもしれないわ。もしかしたら『なんだ、大した事なかった』って事になるかもしれないでしょ?」

「‥‥」


美野里さんは明るくそう言って、いつものように笑った。


「私‥ひなこちゃんの事、妹みたいに思ってる。だから、困ってる事があるなら力になりたいの」

「‥‥ありがとうございます」


嬉しかった。

そんな風に、家族以外の誰かに思って貰えるなんて‥‥

あたしはなんて恵まれているんだろう。



‥‥でも‥



「でも‥‥ごめんなさい」


消え入りそうな声で、あたしは絞り出すように答えた。


施設で育ったなんて‥

そこでの事なんて‥‥


美野里さんに話せる筈がなかった。


明るくて優しい美野里さんは、あたしと違って大切に育てられた匂いがする。

ユーリに出会った時に感じた、家族の愛情に包まれている人特有の暖かさと優しさ。

あたしが、どんなに望んでも手に入れる事が出来ないもの。

それを手にしている人に、あたしの事情を話す事は出来ない。


親しくなった人だから‥

大切にしたいと思える人だからこそ


『可哀想』だと‥

『訳あり』なんだと‥‥


同情されるのも、興味を持たれるのも嫌だった。