夢みたもの

「もし‥あたしが誰かを本気で好きになる事があったら‥‥その人はきっと不幸になる」

「ひなこちゃん‥‥」

「だから、あたしは誰も好きにならない。恋なんて‥‥知らなくていいんです」


そう。

今、あたしが抱えている航平に対する感情は‥誰に聞く迄もない。


この気持ちは‥‥

兄妹ほどに親しい

大切な幼なじみに対するもの。


困惑している美野里さんに、あたしは出来るだけ笑顔を作って見せた。



「そんな事、言わないで欲しいな‥」


少しの沈黙の後。

美野里さんは、ため息混じりにそう言った。


「前にも言ったけど‥‥、ひなこちゃんの人生はまだまだこれからよ?幸せにならなくてどうするの」

「‥‥」

「ひなこちゃんが抱えてる悩み、私に話してみない?」

「‥‥え?」


美野里さんを見つめて、あたしは何度かまばたきをした。


驚いた。

そんな事を言われたのは初めてだったから。


両親も航平も‥

あたしの周りに居る人達は、既にあたしの事情を知っている。

知ってる上で、あたしがこれ以上辛い思いをしないように支えてくれている。


それが嬉しくて‥

時に辛くて‥‥

あたしは申し訳ない気持ちになる。



だから、美野里さんの申し出は初めてで‥‥

どう返したら良いのか分からなかった。