夢みたもの

「‥‥うん」


そう答えながら、あたしは小さくため息を吐いた。


『我儘に』

『貪欲に』

近しい人からそう言われる度、あたしは戸惑う。


それがどういう事なのか、あたしには分からないから‥‥

今でも十分周りに甘えてる。

これ以上、何を望む事があるんだろう‥‥


そう思いながら、ふと顔を上げた時だった。


「‥‥!!」


少し離れた席に居る航平と目が合った。


心配そうに‥

何か言いたげに、あたしを見つめている航平。


「‥‥」


その唇が動きかけた時。

あたしは、慌てて航平から顔を反らした。


「‥‥次、移動教室だよね?早く行こ?」

「ひなこ?」


首をかしげた葵の腕を引っ張って、あたしは慌ただしく席を立つ。


耳元で聞こえる速い鼓動。

熱を帯びた頬。


それを隠すように、あたしは出来るだけうつむいて歩く。


航平を変に意識してしまって、胸がザワザワと落ち着かない。


昨日の事は‥いまなお凄く鮮明で‥‥

思い出した過去は、今でもじっとりと、あたしの心と体にまとわり付いている気がする。

振り払おうとしても振り払えない。

あたしの過去の汚点‥‥


また思い出すかもしれないと思うと、航平に触れるのが怖い。


それなのに‥‥


あたしを見つめる航平の姿にほっとしていた。