夢みたもの

「ひなこ?」


少しの間

あたしは身動きがとれなかった。


心配そうな表情の葵から視線を外して目を瞑る。


大丈夫。

大丈夫‥大丈夫、大丈夫‥‥


何度も何度も‥

いつも、同じような状況に陥る度、航平が繰り返し言ってくれる言葉。

今はそれを自分に言い聞かせる。


「ねぇ‥大丈夫?」


意志の力を総動員して‥

葵が再び一度声をかけてくれた時には、耳鳴りは治まりつつあった。


「うん 平気。凄く嬉しくて‥‥息が止まるかと思っちゃった」


「えへっ」と笑って誤魔化すと、葵は小さく肩をすくめた。


「‥‥まぁ、それなら良いけど」


「でも‥」と続けた葵は、あたしを真っ直ぐ見つめる。


「私が前に言った事、忘れていないでしょうね?」

「‥え?」


その真剣な眼差しに、あたしは誤魔化し笑いをする事も忘れて、葵を見つめ返した。

長いまつ毛を震わせて、葵はゆっくりまばたきをする。

そして、おもむろに口を開いた。


「前に言ったでしょう?私はいつでもひなこの味方だって。だから‥‥本当に辛い事があったら、ちゃんと話して」

「‥‥」

「分かった?」

「‥‥うん、ありがとう」

「約束よ」


そうつけ加えると、葵はいつものように笑う。


その優しさが、泣きそうになる程嬉しかった。