夢みたもの

「決めるのは私じゃないわ」


葵はチラリとあたしを見て小さく笑った。


「私は意見するだけ。決めるのはひなこよ?」


「ただ‥」そう付け加えて一息吐いた葵は、ニヤリと笑って口を開いた。


「この、人一倍鈍感なひなこを大切に想ってるのは、貴方だけじゃないわ。諦めなくて結構。ただ、想うだけじゃ‥願うだけじゃ叶わない事はあるわよ?」


葵の言葉に、ユーリは一瞬目を見開くと、眉根を寄せてノートにペンを走らせる。

そして、書いたノートを葵にだけ見えるように広げて見せた。



「‥えぇ、そうね」

「‥‥?」


葵の返答は短過ぎて、ユーリが何を書いたのか分からない。

ノートを覗き込もうとしたけれど、あたしが覗き込む前にユーリが手早く閉じてしまった。


「‥え なに?」


首をかしげてノートを見つめるあたしに、ユーリは少し困ったように微笑んだ。

そしてページを捲ると、いつもの落ち着きある字体で言葉を綴る。


『そろそろ教室に行った方が良い。人目につくのは良くないから』


そう書いたノートをあたしに向けると、ユーリはあたしの頭を優しく撫でた。


「‥‥ユーリ?」


自然と上目遣いになりながら声をかけたけれど、ユーリはただ微笑むだけ。


その真意は分からなかった。