夢みたもの

「守りたい‥‥口に出すのはとても簡単な事だわ」


静かな声が聞こえた。

ハッとして声の主である葵を見ると、葵は感情の読めない顔で、あたしとユーリを見つめていた。


「本当に大切なものを守りたい時、人はがむしゃらになる。そこには、そうさせるだけの強い意志があるから」


「でも‥」そう付け加えた葵は、相変わらず表情を変えずにユーリを見つめた。


「貴方からはその気持ちを感じない」

「‥‥葵?」

「ひなこの事が大切だと、守りたいという気持ちが本当だとしても‥、何処かで自分に甘えてる」



「違うかしら?」


葵はそう言って、小さく首をかしげた。



淡々とした葵。

険しい表情のユーリ。


あたしは‥

あたしはやっぱり、どうしたら良いのか分からなかった。



「話はそれだけよ」


少しの沈黙の後。

葵はそれだけ言うと、あたしの腕を掴んで歩き出した。


「皆が登校してくるわ。教室に行くわよ?」

「‥あ、うん」


葵に引っ張られて数歩歩き出しながら、あたしはユーリに視線を向けた。