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「綺麗な夕焼け」


特別棟3階。

学校が坂の上にあるからか、窓からは街並みが綺麗に見える。

ビルやマンションの隙間から見える夕日は、眩しい光を放ちながら、空と街を赤く染め上げていく。


あたしは赤く染まった景色を眺めながら、ふと葵の事を思い返した。



冷静沈着。

何でも完璧にこなす葵。

でも時々、葵は不安定な雰囲気を醸しだす。

それは、さっきみたいに瞳を揺らしたり、僅かに口元を動かしたり・・・

ほんの小さな動きで、瞬きをする間に消えてしまうものだけれど、普段の葵とは明らかに違う。


そしてそれは、葵が『一之瀬』という家の事を気にした時だと、あたしは知っている。


「葵、今でも気にしてるのかなぁ・・・」


あたしはため息交じりに呟いた。