夢みたもの

こんなのは卑怯だ。

自分の浅ましさや卑しさにウンザリする。


‥‥でも‥

今の私には、ユーリの存在がとても大切だった。


航平もユーリも‥‥2人とも大切。

その気持ちは嘘じゃない。


守られるだけの存在は嫌。

この気持ちも真実。


‥‥でも、少しだけ甘えたい。

苦しい時。

ほんの少しで良いから‥‥心の支えが欲しい。


それを望むのは駄目なの?


小さなため息を吐いて、あたしは微かに首を横に振った。


それを言葉にしない理由は分かってる。


航平もユーリも‥‥きっと受け入れてくれるから。

甘えさせてくれるのが分かっているからこそ、自分の汚さに辟易する。



「‥‥教室行こっか?」


あたしはユーリに笑いかけると、音楽室のドアを勢いよく開けた。


今は考えない。

考えたくない。

今、目の前にある現実だけに向き合おうと思った。



「‥ね、早朝の学校って‥、ちょっと特別な雰囲気だね?」


後に続くユーリに声をかけた、その時。



「‥‥ひなこ?」



いつもの聞き慣れた声が聞こえてきた。