夢みたもの

「練習の邪魔してごめんね?」


精一杯の笑顔。

少しわざとらしいけれど、ここは笑わなくちゃいけない。

あたしはユーリを見つめて、何でもないという顔を作った。



「ねぇ‥最近は早朝から弾いてるの?」


ユーリは小さく頷いた。


『STRAUBだと、店の雰囲気に合わない曲は弾けないから』


会話が変わった事に安心したのか、ユーリはほっとした表情を見せる。

その表情にあたしも胸を撫で下ろした。



「そっか‥じゃぁ、明日からあたしも来ていい?」

『朝から?』


驚いた表情を見せたユーリに、あたしは小さく笑って頷いた。


「最近、STRAUBで短い時間しか話が出来ないでしょ?前みたいに、ここで気兼ねなく過ごせたら楽しいと思うの」

『僕は構わないけど、ひなこは大丈夫?』


一瞬、戸惑うような表情をしたユーリ。


何となく‥‥、

航平の事を言われているような気がして、胸がチクリと痛む。


「大丈夫。朝早いのは平気だもん」


あたしはそう言って笑った。


質問の真意には気付かないフリをして‥‥

今を上手くやり過ごす。


そんな自分を卑しく感じた。