夢みたもの

重い雰囲気の音楽室。

動けないあたし。


『そろそろ行こう』


ユーリは手早くピアノを片付けると、あたしにそっとノートを差し出した。


『人目に付くと困るから‥早めに教室に行こう』

「‥‥うん」


視線を落としたまま、歯切れの悪い返事を返す。


納得のいかない事ばかり。

でも、ユーリに話す気が無い以上、これ以上の事は分からない。


‥‥何より

何より、ユーリに拒絶された事が堪らなかった。


あたしは‥‥

本当に、ユーリに必要とされているの?


そう思った時。

頭上でユーリのため息を聞いた気がして、あたしはハッと目を見開いた。


「‥‥あ、」


また‥心配させる。

また、気を遣われて‥守られるだけの存在になってしまう‥‥


いつもの居心地の良い場所に足を突っ込みそうになって、あたしは慌てて顔を上げた。


「大丈夫だよ!?」


突然の声に驚いたのか、ユーリは目を丸くしてあたしを見つめる。


「あたしこそごめんね?心配しないで!?」



これ以上、ユーリの心に負担をかけたくない。


あたしは大丈夫。


そう自分に言い聞かせた。