夢みたもの

ピアノに向かうユーリを見つめながら、あたしはほっと息を吐いた。


やっと笑顔を見せてくれるようになった、完璧な容貌のユーリ。

ユーリが微笑むと、その周りがキラキラ輝いて見える。

私にとって‥‥ユーリは今も、あたしを救ってくれる天使だった。


「ユーリのピアノ‥大好き」


呟くように言ったあたしに、ユーリは少し照れた笑顔を向ける。

その僅かにはにかんだ笑顔に、あたしは一瞬ドキッとした。

きっと‥鞠子なら卒倒してる。

それぐらい人を惹き付ける魅力をユーリは持っているんだと、改めて実感した。


「‥ほ ホントに凄いよね‥‥」


ユーリの笑顔に一瞬ドギマギしたあたしは、それを隠す為に慌てて口を開いた。

演奏を終えたユーリは、あたしを見て小さく首をかしげる。


『凄い?』

「うん」


あたしは大きく頷き返した。


「ユーリのピアノを聴くと元気になれるの。技術的に凄いのはもちろんだけど‥‥きっと、ユーリのピアノは聴く人皆を幸せにする事が出来るんだと思うな‥」


そう言ってユーリに笑いかけたあたしは、次の瞬間、ハッとして口をつぐんだ。



ペンを持つ手をピタリと止めたユーリ。

さっき見せた笑顔の片鱗も見せず、全ての感情を殺した、人形のような表情のユーリがそこに居た。