夢みたもの

『家族が欲しい』


それが、あたしが最初に望んだ夢。



ユーリの家族と出会うまで、あたしは施設から逃げ出す事しか考えていなかった。


約束の日に迎えに来てくれなかった母。

耐え難い毎日。


自分の置かれた状況を受け入れる事が出来なくて‥

その全てに絶望して‥‥

ただ本能のまま逃げ出したかった。


でも、ユーリとその家族に出会って‥‥

あたしは生まれて初めて、家族の温かさに触れた。

優しくて、温かくて‥‥

ただ一緒に居るだけなのに、心が満たされていくのを感じた。


怯えて暮らす必要も無くて、くすぐったい程に胸の奥が温かい。

それが幸せだと気付くのには、少しだけ時間がかかった。


‥‥だって、あたしは知らなかったから。

ずっと‥‥施設の中で、名ばかりの家族との関係しか知らなかったから。


『家族』は、あたしにとって幸せの象徴。


再び耐え難い施設での生活に戻って、折れそうになる心を支える為に、幸せだったユーリとの記憶を心の中に閉じ込めたけれど‥‥


『家族』という夢だけは捨てられなかった。