頭が割れるように痛い。


いつもより鮮明に思い出した記憶は、あたしの頭の中で何度も反芻する。


「‥‥助けて‥」


痛む頭を押えて、あたしはそう呟いていた。


「‥‥怖い‥、怖いよ‥‥」

「ひなこ」


航平が心配そうにあたしの名前を呼ぶ。


「大丈夫だよ。俺が‥俺がひなこを守るから‥‥ひなこを苦しめる過去からも、救ってみせるから‥‥」


そう言ってあたしに手を伸ばした航平。

でもあたしは、その僅かな距離を残して航平の手から逃れた。


「‥‥近付かないで‥」


ドアに背中を押し付けるように立ったあたしは、呆然と立ち尽くす航平にそう言った。



頭が痛い。

胸は不安で締め付けられる。



今は‥‥

今は、あたしに近付いてくる全ての事が恐怖だった。



「‥‥ひなこ」


「ごめんなさい」


あたしはそれだけ言うと、航平の部屋を飛び出していた。