「堤君、あなた掃除当番でしょ!?何さぼってるの?」

「そうだよぉ。イチャつくのもいい加減にしてよねぇ?」


険しい表情の葵。

その背後から、同じく掃除当番の鞠子がひょっこり顔を出して口を尖らせた。


「も〜イチャつき禁止!周りに迷惑だよ?目の毒だって」

「イチャついてなんかないよ!?」

「嘘だぁ。鞠子の目は誤魔化せないよ?しっかり現場を押さえたもん」

「だから違うって!!」


慌てて訂正するあたしに、鞠子はニヤニヤ笑う。


「いいなぁ〜・・・2人はいっつもラブラブだもんねぇ」

「どういたしまして」

「だから違うって!!航平も、何 勝手に認めてるの!?」


あたしは、鞠子と一緒になってニコニコ笑う航平を軽く睨み付けた。


「勝手な事言わないで」

「え〜だってさぁ・・・」

「とにかく!堤君と鞠子は掃除に戻る!!」


業を煮やした葵が、腰に手を当て、顔をしかめて言った。


「だってぇ・・・」

「『だって』何? 鞠子?」

「はぁい」


葵に睨まれた鞠子は、まだ何か言いたげにしながらも、すごすごと教室に入っていく。


「ほら、堤君も」

「はい はい」


葵に促された航平は、小さく笑ってあたしを見た。


「それじゃ ひなこ、またあとでね?」


そして、楽しそうに手を振って教室に戻って行った。