「そう。君を誰にも渡したくないくせに、これ以上独占欲を出したら‥‥君に嫌われるって怖がってる」

「‥‥」

「バカなヤツだと思わない?」


宮藤君はそう言って肩をすくめた。


「俺には理解出来ないね」


「‥‥あたし‥嫌われたと思ってた」

「堤が雪村さんを?‥‥ありえないよ」

「‥‥」


胸の奥がだんだん暖かくなる。

鼓動が耳元で聞こえるぐらい大きくなったけれど、それは安心出来る‥‥心地良い音としてあたしの中に存在した。


‥‥嫌われたわけじゃない。

その事が凄く嬉しかった。



「‥‥ホント 君達は手がかかるね」


宮藤君はあたしの顔を覗き込んで言った。


「‥ほら、今の気持ちを大切にした方が良い」

「‥え?」

「今‥雪村さんが感じてる、その気持ち」


あたしの胸元を指差すと、宮藤君は肩をすくめて笑った。


「ま、そこに居るのが俺じゃないって処が、雪村さん最大の選択ミスだと思うけどね‥?」

「‥‥何それ‥?」


心を見透かされているみたいで、あたしは慌てて首を横に振った。


「そんな‥そんなんじゃないから‥!!」

「‥‥」

「嫌われてなくて安心したけど‥、それは、大切な幼なじみを失わずに済んだって事だから‥‥」


胸に込み上げる嬉しさは、それ以外の理由である筈がなかった。