頭の中が真っ白だった。


鞠子が言った言葉が頭の中で反響する。



『ひなこと叶君が付き合ってるって、いつもコソコソ会ってるって・・・』



・・・・バレた・・・


必死に隠していた事が音を立てて崩れていく。

足下がぐらりと揺れて、目の前が真っ暗になる気がした。


「ちょっと、何言ってるの?」


葵が慌てた様子で椅子から立ち上がる。


「また、変な事言って・・・、友達に変な言いがかりをつけるのは止めなさい」

「言いがかりじゃないもんっ!!」


鞠子はそう言って頭を振ると、机に両手を強く突いてあたしを覗き込んだ。


「・・・鞠子だって・・・信じてないもん。だからひなこに聞いたんだもん!」

「・・・・・」

「そういう噂が1年の方から流れてるの。でも、嘘でしょ!?ひなこには、航平君が居るもんね?・・・そうだよね?」

「・・・・・!!」


その言葉に、あたしはハッとして教室の端を振り返った。


突然の出来事に、静まり返った教室の中。

誰もが身動きしない中で、その人はただ立ち尽くしている。


唇を引き結んで、眉根を寄せて・・・・

いつものニコニコ顔の片鱗も見せず、ただ、険しい表情で、航平はあたしを見つめていた。