夢みたもの

「でもその頃は・・・、ユーリはまだ昔のままだったんですね?」


あたしがそう尋ねると、崇さんは一瞬あたしを見たけれど、すぐにまた表情を固くして視線を逸らした。


「そうだね。無理をしていなかったとは言えないけど、よく笑う、明るくて優しい悠里だったよ?杏奈の為に気を張って、必死に守ろうとしてた」


「でも・・・」


そう呟いた処で、崇さんは唇を引き結んだ。


辛そうに眉根を寄せて、険しい表情で空を睨む。

でも、それは僅かな間だけで、崇さんは再びため息を吐くと、あたしを真っ直ぐ見つめて言った。


「2年前。杏奈は悠里の制止を振り切って家を飛び出した」


「そして・・・大通りに飛び出した杏奈は、追いかけてきた悠里の目の前で、車に跳ねられた」

「・・・・」

「その時、2人の間にどんなやり取りがあったのか・・・僕は分からない。ただ、その時から・・・悠里は話せなくなった」

「話せなくなった?」


あたしが繰り返すと、崇さんは小さく頷いて、ユーリを見つめた。


「ユーリの症状は『心因性失声症』というらしい。声を出す為の機能は正常で、機能上は声が出る筈なんだ」


「機能上はね」


崇さんはそう繰り返し呟いた。