夢みたもの

「雪村さん・・・・下の名前は?」

「ひなこです。雪村 ひなこ」

「雪村 ひなこ・・・」


そう小さく繰り返し呟いていた崇さんは、やがて、あたしの視線に気付いて、少し慌てたように笑った。


「そっか『ひなこ』ちゃん・・・君が、悠里の探していた女の子だったんだね?」

「・・・え?」


崇さんは嬉しそうに口元をほころばせた。


「ウィーンに居る頃から聞いていたよ?幼い頃、一緒に過ごした女の子が居て、今でも忘れられない・・・って」

「・・・・」


あたしの頬が再び熱くなるのと、ユーリが崇さんに向かってノートを差し出すのは、ほぼ同時だった。


書かれた言葉は、見なくても分かる気がする。


ノートに書かれた言葉を見た崇さんは、目元を和ませて小さく笑った。


「ごめん、ごめん。悠里が初めて連れてきた女の子だと思ったら、ちょっと嬉しくてさ」


崇さんはそう言うと、あたしを見て優しく笑いかけた。


「いつまでも立たせたままでごめんね。さ、座って?」


あたしをソファに座らせると、少し隙間を空けて崇さんも隣に腰を下ろす。

そして、タイミング良く美野里さんが運んできたコーヒーを受け取ると、満足気に口に運んだ。