「あれ?そういえば、葵は?」


鞠子の話が一区切りした処で、あたしは教室を見回しながら鞠子に尋ねた。


いつも弁卓を囲む3人の内の一人。

中学の時からの親友の葵の姿が見えなかった。

授業が終わると同時に教室を出ていったけれど、昼休みが半分近く過ぎるのに戻ってくる気配がない。


「具合でも悪いのかなぁ・・・?」


あたしがドアの方に視線を向けると、鞠子が「ふふん」と鼻を鳴らした。


「葵ちゃんは生徒会室だよ」

「生徒会室?」


「そう」と鞠子は頷くと、得意げな顔を向ける。


「葵ちゃんは、昨日から生徒会の仕事が忙しそうなの」

「へぇ・・・って言うか、鞠子はホント詳しいね」


感心してそう言うと、鞠子は頬を赤く染めて嬉しそうに笑い、親指を立てて目を輝かせた。


「常にアンテナ張り巡らしてるもん。校内の事なら何でも聞いて?」

「あ、うん・・・まぁ、何かあればね」

「え〜聞いてよ?何組の誰が誰と付き合ってるとか、恋愛事情に超〜詳しいよ!」

「ははっ・・・そっか」


それこそ興味がないな、と思いつつ、あたしは苦笑した。


「あ!ひなこ 今、興味ないって顔した」

「してないよ」

「うそ。鞠子の目は誤魔化されないよ?」


ずいっと顔を近づけてきた鞠子に、あたしが同じ分だけ後ずさりながら作り笑いをした時。


「へぶっ?」という声と共に、鞠子の顔が机に押しつぶされた。