「うん・・・」


航平の手が頭から離れて、手が置かれていた場所が軽くなる。

あたしは離れていく航平の手を目で追いながら、少しだけ寂しさを感じていた。


きっと・・・航平のあんな顔を見たせいだ。


いつもニコニコ笑っている航平。

あたしは、笑っている航平しか知らない。

あんなに大人びた雰囲気を航平が持っているなんて、今までずっと一緒に居たのに知らなかった。


何だか胸の奥がザワザワして落ち着かない。

今まで気にした事もなかったのに、どうして航平の事を気にしてしまうのか、自分でもよく分からなかった。


「・・・・・」


あたしは頭に手をやりながら、目の前で優しく微笑む航平を見つめた。


「どうかした?」

「うぅん・・・何でもない」


今日、何度目かのセリフを口にしながら、あたしは目の前のカフェオレが入ったカップに視線を落とした。



その時。

鞄の中で、あたしの携帯がメールの着信を知らせる軽快な音を立てた。