そして、顔を上げた航平は、いつになく真剣な表情であたしを見る。

その表情に、あたしは胸の鼓動が大きくはね上がるのを感じた。


「・・・・・」


普段、優しくていつもニコニコ笑っている航平は、その辺の女子より華やかな印象が強い。

航平の真剣な顔を見るのは、陸上の大会がある時ぐらいだ。



でも・・・・今。


あたしの目をしっかり見据えて、ただじっと見つめる航平は、高校生とは思えないぐらい落ち着いた大人の雰囲気を醸し出している。


そんな航平を、あたしは見た事がなかった。



「どうしたの・・・航平?」


あたしは、航平の雰囲気に圧倒されながら言った。


鼓動が早くなるのに併せて、頬がどんどん熱くなっていくのを感じる。

それでも、あたしは航平から目を離す事が出来なかった。


「何か、今日は変だよ・・・?」

「そう?」

「何かあった?」


あたしがそう言って小さく笑いかけると、航平は息を吐きながら苦笑した。


「ひなこには、かなわないな・・・」

「・・・・?」


あたしが首をかしげると、航平はあたしの頭に手を置いて、髪がくしゃくしゃになるまで撫でた。


「何?・・・何なの?」


髪を整えながらそう言うと、航平はいつものように微笑む。


「何でもないよ?・・・ひなこは可愛いね」