夢みたもの

「・・・航平?」


あたしが声をかけると、航平はいつものように微笑んだ。


「なに?」

「・・うぅん、何でもない」



いつもと同じように微笑んでいるのに・・・・いつもとどこか違う。

でも、どう違うのか、どうして違うのか、あたしには分からなくて、ただ航平を見つめる事しか出来ない。


あたしが目を離せずにいると、やがて航平は吹き出して笑った。


「ひなこ、見つめ過ぎ!」

「え?」


航平の声にハッとしたあたしは、まばたきを数回した後、改めて航平を見た。


「ごめん・・・ぼーっとしちゃった」

「いくら格好良いからって、そんなに見られたら照れちゃうよ?」

「何言ってるんだか」


あたしがそう言って苦笑すると、航平はニッコリ笑う。

その様子は、すっかりいつも通りの航平で、あたしは少し安心した。


「ほら、早く着替えないと?後で今日のノートよろしく」

「うん、分かった」



20時の約束。

それも、いつもと変わらない約束だった。