夢みたもの

リビングからは、雅人の笑い声と雅人をあやす父の声も聞こえてくる。

その声を聞きながら、あたしは階段を上がって自分の部屋に向かった。



優しい両親。

可愛い弟。



そんな家族の中に居て、あたしが幸せでない筈がない。

あのまま施設に居たら、きっと一生知らなかった幸せを、今、あたしは手にしている。



でも。

あたしの心は、いつも何処か不安に感じている。



『ここに居て良いの?』



そう 何度も何度も・・・数え切れないぐらい自分自身に問い掛けてきた。


母が雅人を妊娠した時から。



それまでは、両親はあたしだけのものだった。

施設から引き取られた、血が繋がっていないあたしを、本当の娘のように大切にしてくれる両親。

少しずつ少しずつ・・・時間をかけながら、やっと本当の家族になれたと思った時、母は雅人を妊娠した。



『お姉さんになるのよ ひなこ?』



幸せに笑う両親に笑顔を返したあたしは・・・

本当は、涙が出る程寂しかった。



両親と血が繋がった子供が生まれたら・・・この家にあたしの居場所はどこにもない。



『ここに居て良いの?』



あの時からずっと・・・あたしは自分に問いかけ続けている。