夢みたもの

「やっぱり、理解出来ないって顔してる」


宮藤君はあたしの顔を見て小さく笑った。


「堤はこういう忠告をしないタイプだからね」


「説明してあげるよ」宮藤君はそう言って、またあたしを先導するように廊下を歩き出す。

宮藤君と微妙に距離を取りながら、あたしはその半歩後ろを付いて行った。


「さっきも言ったけど‥雪村さんって男子に結構人気があるんだよ?でも、いつも堤が一緒に居るし、付き合ってるって噂が入学当初から流れてる。だから男子は、雪村さんには手を出さない。堤を敵に回すのは利口とは言えないからね」

「はぁ・・・」


言いたい事はあるけれど、今はとりあえず黙っていよう。

そう思ったあたしは、眉根を寄せつつも宮藤君の話に相づちを打つ。



いつもと変わらない毎日が続く事。


誰に注目される事なく、ひっそりと過ごす事があたしの望みなのに、自分の知らない処で噂をされているなんて、予想もしていなかった。



落ち着かない気持ちでいるあたしを余所に、宮藤君の話は続く。


「でも、仮に編入生との噂が流れるようになると、堤との仲を疑う男子が出てくる。もしかしたら、雪村さんと親しくなるチャンスがあるかも・・・と思うと、今まで大人しくしていた男子は雪村さんと積極的に接触を取ろうとすると思う」

「・・・・・」

「男子、苦手なんでしょ?」


宮藤君は切れ長の目の端でチラリとあたしを見て言った。