「葵ちゃん、今朝は何語話してたの?英語じゃないよね?」

「オーストリアだと・・・ドイツ語?」


葵はあたしを見て頷くとニッコリ笑った。


「さすがひなこ、その通りよ」

「えっ!?葵ちゃん ドイツ語喋れるの!?超スゴイ!」

「まさか」


興奮して声を上げた鞠子に、葵は肩をすくめて自嘲的に笑う。


「付け焼き刃よ。彼が編入してくるって聞いてから、簡単な言葉と使いそうな言葉だけ覚えたの」

「それでもスゴイよ!!超カッコいい」

「さすが葵、凄いね」


あたしと鞠子が感心してそう言うと、葵は小さく首を振った。


「必要だから覚えただけよ」

「でも・・・それじゃ、叶君は日本語が分からないの?」


鞠子がつまらなそうに、眉根を寄せてそう言った。


「ドイツ語って・・・英語も駄目なんでしょ?話せないじゃん!?」

「まぁ、そうなるわね」

「え?・・・そうなの?」

「そうに決まってるじゃん!?ひなこってば、今の話聞いてなかったの?」


鞠子が口を尖らせる。


「だから、イケメン以外の噂が流れてなかったのかぁ・・・」


「つまんなぁい」鞠子はそう言うと、頬を膨らませて机に突っ伏した。