夢みたもの

「彼の名前は叶 悠里(カノウ ユウリ)」

「普通だねぇ・・・」


鞠子が期待外れといった顔をする。


「もっと外国人っぽいカッコいい名前だと思ってた」

「外国名もあるわよ?でも、日本に居るんだから日本名の方が良いでしょ?」

「あ、そっかぁ・・・」


鞠子は納得して頷くと、「それで?」と葵に続きを促した。


「どこの国の人なの?」

「オーストリアと日本人とのハーフで、ウィーンの音楽学校に通っていたらしいわ」

「へぇ〜、何かよく分かんないけど・・・超カッコいい!!」


鞠子は頬を赤くしてため息を吐く。


「ウィーンってさ・・・チョコが有名な国でしょ?」

「それはベルギー」


葵は呆れ顔でため息を吐いた。


「鞠子にかかると、全ての事がカッコいいで片付くわね」

「そのポジティブさが鞠子の良い処じゃない?」

「どちらかと言えば、短所だと思うわよ?」


あたしと葵が顔を見合わせて苦笑いをする横。

鞠子は一人「カッコいい」を連発していたけれど、しばらくすると「そういえば・・・」と葵に向き直った。