夢みたもの

「じゃぁ、まずは名前から!」


「さぁどうぞ?」鞠子が手を差し出して促すと、葵は呆れ顔で一息吐いた。


「あら、鞠子の自慢の鼻も名前を嗅ぎつけるには到らなかったのね?」

「って言うか、イケメンって噂は流れてるのに、それ以上の情報が流れてないんだもん」


口をモグモグ動かしながら鞠子はそう言うと、期待を込めた表情で葵を見る。


「それで、彼は何者?」

「何者って・・・凄い言われようね」

「だって、日本人とは思えない顔してるし。それに、葵ちゃん今朝、外国語で話しかけてたでしょ!?」

「さすが鞠子、よく見てるわね」


葵が呆れつつも感心した口調で言うと、鞠子は鼻の穴を広げて得意気に笑った。


「鞠子の観察眼はスゴイよ?」

「はいはい」


軽く受け流すと、葵はチラリとあたしに視線を投げかけてくる。


「その顔・・・ひなこも知りたいって顔してる」

「え?」

「まぁ、今朝の騒ぎの当事者だしね」



葵はそう言って小さく笑うと、食べ終わった弁当箱を片付けながら話し始めた。