夢みたもの

「ごめん。今朝は騒がしかったもんね」


「反省してる」と付け加えると、葵はまたため息を吐く。


「まぁ、過ぎた事は仕方ないけど・・・」


そう言いながら、葵は少し離れた席で雑誌を見ながらクラスメイトと話している航平に視線を送った。


「彼は、ひなこが関わると厄介よね」

「ごめんね」


他に言うべき言葉が見つからなかった。


「まぁ、今に始まった事じゃないけど」


葵は頬杖をついて苦笑すると、あたしをチラリと見て笑った。


「本当に大変ね・・・同情しちゃうわ」

「やめてよ」


葵に言われると、虚しさが込み上げてくる。

まとわりつく嫌な空気を払おうと、あたしは軽く頭を振った。


「まぁ、彼のお気に入りなんだから諦めるのね」


「そんな事しても無駄よ」と言いながら、葵はあたしの肩をポンポンと叩く。

明らかに状況を楽しんでいる顔だった。


「お気に入り・・・って言うか、幼なじみだよ?」

「何言ってるんだか」

「だって、それ以外の関係じゃないもん」


あたしがそう言うと、葵は頬杖をついたまま「そうねぇ・・・」と呟いた。


「確かにそう。だから不思議なのよ」