だから、どこかへ行く時は車椅子が必要で、トイレに行く時でさえも、車椅子で行かなければならない。
1人で行くことが出来ないから、看護師をその度に呼ばないといけない。
それが何より、苦痛だった。
忙しそうにしている看護師に、ナースコールを押して呼び出すことが苦手だった。
「よし。沙奈の好きな卵のお粥に桃もついてるな。
ゆっくりでいいから、食べな。
俺も、沙奈が寝てる間コンビニでご飯買ってきたから一緒に食べような。」
紫苑は、コンビニでおにぎりとお味噌汁を買って、一緒に食事をとった。
1人で食べるより、誰かとご飯を食べた方が何倍も美味しい。
紫苑と、翔太が前に言っていた。
最初は分からなかったけど、2人と過ごしてきて今はその意味がよく分かる。
2人が仕事の日は、ご飯のことなんて考えなかった。
あまり、お腹も空かないから食べなくてもいいと思って食べなかった。
そんなことをしていたら、本気で紫苑と翔太に心配されたんだっけ。
「沙奈。昨日よりも食べられたな。
えらいぞ。」
ご飯を食べられただけでも、紫苑は優しく褒め頭を撫でてくれる。
甘やかしすぎではないかと思う時もあるけどやっぱり嬉しい。
自然に笑みになると、紫苑は顔を赤くしていた。
「じゃ、じゃあご飯片付けるな。
そろそろ、大翔が朝の回診で診察に来ると思うけど1人で大丈夫か?」
「うん。大丈夫。」
「無理、してないよな?」
「うん。1人で大丈夫。」
病院が怖いと言った時から、紫苑は病院で1人になることをずっと心配してくれている。
「何かあったら、すぐ俺の携帯鳴らしてね。
遠慮なく、鳴らしていいから。」
そうは言っても、さすがに仕事中に何も考え無しに携帯は鳴らせないよ。
そう思いながらも、私は素直に頷いた。
あまり言い返すのもよくないよね。
「仕事のこと、気にしなくていいからな。
患者さんには悪いけど、正直家族である沙奈の方が大事だ。
最優先に沙奈と翔太のこと考えてる。
だから、そこのところは本当に気にしなくていいからな。」
「ありがとう。」
心に思っていることは、全て紫苑にはお見通しだ。
考えてるいることを分かっているのは本当にすごいと思う。
センサーが着いてるのかなとか思う。


