だけど。
それだけじゃなかった。
心の中に、深い傷があるなら俺が少しずつ治療していきたい。
彼女が暗闇の中に迷っているのであれば、俺が明るく彼女の行く道を照らしてあげたい。
彼女が辛いと感じているのであれば、彼女から少しも離れず寄り添っていきたい。
だけど、初対面の自分がいきなり彼女に近づきすぎたら余計に塞ぎ込んでしまう。
悔しいけど、今は彼女との距離に気をつけながら、1番に彼女を救っていけるようにするか。
だけど、いつか沙奈ちゃんへこの気持ちを伝えたいと思う自分もいた。
「大翔、沙奈のことありがとうな。
本当に、生きた心地がしなかった。」
そんなことを考えながら、仕事をしていた俺の隣に座り紫苑はそう話した。
「かなり、酸素状態も悪かったからな。」
近くに、医者がいなかったらきっと沙奈ちゃんは命を落としていたかもしれない。
だけど、そんなこと紫苑には言えなかった。
まあ、俺から言わなくても紫苑は優秀だから分かっていたとは思う。
「今回、沙奈ちゃんに体の負担が大きくかかり過ぎてしまった。
ごめんな。
沙奈ちゃんには負担をかけてしまうと思うけど、しばらく入院になる。
最低でも、2週間。
リハビリと治療を頑張ってほしい。」
「分かった。
大翔、俺と翔太も一緒に沙奈のことをみる。
でも、沙奈の主治医は大翔だから沙奈のことよろしくな。」
「任せてよ。
沙奈ちゃんのこと俺も一緒に支えていくから。」
「ありがとう。頼もしいよ。」
いつか、彼女の心の中に入れたら。
1番近くに自分が居られたら。
思うことはたくさんあるけど、今は彼女の治療に専念しよう。
1日でも早く、彼女を安心できる場所へ帰してあげよう。


