だから、これからもこうなるのかと思うと不安で仕方なかった。
「ごめん、翔太。紫苑。
私、覚えてないの。
何も、覚えてないの。
だから、私。
自分にとって、何が1番辛いのか分からないの。」
そう。
過去にあったことは、よく覚えていなくてそのままそっくり記憶がなくなっていた。
「沙奈…。
それなら、無理に思い出そうとはするな。
あの時、過呼吸になったのは少しでも過去に何があったのか思い出そうとしたんじゃないのか?
沙奈は、覚えてないんだろうけどきっと心は覚えているんだ。
過呼吸を起こすくらいだ。
それだけ、過去に対して沙奈の心は受け入れたくないと感じていたと思うよ。
それに、記憶が無くなるくらいでもある。
人は、辛いことがあると記憶が飛んでしまうことがあるんだ。
心理現象なのか、詳しいことは分かっていないけど。
だから、沙奈が覚えてないのも無理ないと思うんだ。」
紫苑は、そう話し私の頬をすくった。
「沙奈。時間をかけて、ゆっくりでいいから今心の中にある大きなストレスを取り除いていこう。
過去を乗り越えるのは、本当に気力がいると思うんだ。
もちろん、辛いこともたくさんある。
だけど、沙奈は1人じゃない。俺達が常に味方でいるから。
これからも、安心して頼ってよ。」
「ありがとう。」
紫苑と翔太の温かさや優しさは、私の不安をかき消してくれるようだった。
きっと、初めからそんな2人だったからついて行く道を選んだのだと思う。
一緒なら、幸せになれる気がしたから。
大きな愛を私にくれるから。
一緒に、過ごしていくうちに記憶を取り戻すことが出来るだろうか。
そこまで、強い心を持つことができるだろうか。
不安に思うことはたくさんあるけど、無理はせず2人から話も聞きながら取り戻していこうと思った。
それに、もし私の記憶が戻ったとしても2人が傍にいてくれるなら大丈夫な気がしていた。
私も、変わらなければいけない。
少しずつでも、前に進もうと思う。


