そういえば、私…。
どうして2人について行こうと思ったんだっけ。
そもそも、他人である知らない2人と一緒に生活を送ってもいいと思ったんだっけ?
どうして、病院にいたんだっけ?
あれ?
記憶がない…。
父親は、誰だっけ?
私の残る記憶は母と私が少し大きくなるまで育ててくれた冨山さん。
どうして…?
「沙奈…?」
「紫苑、沙奈が!」
私は、気づいたら涙が溢れ出ていた。
それに翔太が気づき、私の体を半分起こし背中を支えてくれた。
「過呼吸か?」
「沙奈、大丈夫だから。」
私は、気づいたら紙バックを口に当てられていた。
「沙奈、苦しいと思うが少し頑張ってくれ。」
紫苑の言葉が、上手く聞き取れなかった。
口や、手足に力が入らない。
じわじわと、痺れる感覚が私を襲った。
「しお…ん…
わ、私…し…」
「それ以上、言うな。
何も喋るな。
大丈夫だから。
沙奈は、俺と翔太が守るから。」
遠のいていきそうなほど、呼吸が苦しくて咳もとめどなく出てきた。
「発作だ…。
こんな時に…。
翔太!急いで救急車を呼んでくれ!
車より、救急車の方が早い!」
紫苑のその言葉を最後に、私の意識は遠のいていた。
「まずいな…。
早く…
1秒でも早く、病院に着いてくれ。」
救急車の中で揺られながら、紫苑と翔太は何度もそう言っていた。
意識がはっきりしない中で、私は何とか生きようともがいていた。
次に目が覚めた時には、いつもと違う場所にいた。
腕に痛みがあり、真っ白い天井と薄ピンクのカーテンに囲まれた空間にいた。
自分に点滴が入ってて、酸素マスクがつけられていたのを確認し、病院へ連れられたということを理解した。
近くで、私の手を握りしめている翔太と紫苑がいた。
何があったのか、思い出せなかった。
そんなことを考えていると、紫苑と翔太は目を覚ました。
「沙奈。
目、覚ましたんだな…。
本当によかった…。
大丈夫か、苦しくはない?」
涙を流しながら、私の頬に手を添える紫苑。
そんな紫苑の手に、自分の手を重ねた。
「大丈夫。
心配かけて、ごめんね…。
それより、ここはどこ?」
「沙奈、覚えてないか?
突然、呼吸が苦しくなったんだよ。
過呼吸って知ってるか?」
紫苑の言う過呼吸は聞いたことがなかった。
首を横に振ると、紫苑は丁寧に説明してくれた。
「過呼吸っていうのは、強いストレスが降りかかると、急に呼吸が苦しくなる一過性の発作みたいなものなんだ。
手足に痺れが出てきたり、唇が痺れてくる人もいる。
それに、沙奈は喘息の発作も誘発されて余計に苦しかったと思う。
過呼吸を1度起こすということは、これからも何回か起こすかもしれない。」
「沙奈。沙奈の抱える大きな心の重荷を俺達は取り除きたいって思ってる。
だから、沙奈も安心して俺たちに話してほしい。
1人で抱え込む物が大きくなればなるほど、自暴自棄になってしまうんだよ。」
翔太に、そう言われたけど私がどうしてそうなったのか自分でもよく覚えてなかった。


