日本から飛行機でおよそ十三時間、蘭と圭介はアメリカの空港に到着した。これから入国手続きを済ませなくてはならない。

「深森さん、英語は話せますか?」

「英会話は親に習わされていましたから、多少なら……。でもうまく話せるか緊張しますね」

表情が珍しく固い圭介に対し、必要ならば自分が通訳すると蘭は言って先に入国手続きを済ませる。

十八歳という若さで監察医という肩書きを見せたため蘭は審査官に怪しまれたが、英語で丁寧に説明し、法医学研究所に確認をされてようやく審査が終わった。

「神楽さん!ようやく終わったんですね」

先に審査が終わった圭介が苦笑しながらキャリーケースを引いてくる。蘭は「待たせてしまい、申し訳ございません」と頭を下げた。その光景に二人に多くの目が集まる。

「か、神楽さん!顔を上げてください!みんなが見てますから!」

慌てた様子の圭介に言われ、蘭はゆっくりと顔を上げる。蘭が顔を上げたことにホッとしたような顔に変わった圭介は、キャリーケースを引いて空港の出口に向かいながら訊ねた。