体がゆっくりと離れ、蘭はゼルダを見上げる。ゼルダの瞳には涙が溜まっていた。

「無事に帰って来て……。お願い……」

蘭はブローチを握り締める。今まで自分の存在を必要としてくれたのは、両親を失ってからは星夜しかいなかった。しかし今、蘭を必要だと思ってくれる人がこんなにもいる。それが蘭の胸を優しく温めた。

「はい。必ず帰って来ると約束します」

飛行機の出発時間が迫っている。蘭と圭介は「行ってきます」と言い、歩き出した。

「深森くん、蘭ちゃんをお願いします!」

「気を付けて!」

「絶対に帰って来て!」

三人に見送られ、蘭と圭介は飛行機に乗り込む。数十時間後には蘭たちは戦いの場に到着する。

「神楽さん、俺が必ず守りますから」

隣の座席に座った圭介が蘭を見つめる。蘭は「ありがとうございます」と一瞬微笑んだ後、窓の外を見つめた。

ずっと逢えないと思っていた人に再び逢える。そう思うと、蘭の胸には星夜を何が何でも救いたいと思ってしまうのだ。