あなたの笑顔が見たかった
幼い頃に見たあの笑顔を

全てが哀れだと思われる日々
そう生きることさえ
暗闇に閉じ込められた私のたった一つの光
それがあなたでした
転んだ時に手を差し伸べてくれた
いつでも優しく見守ってくれた
でもある日から距離が遠くなって
冷たい風が吹いた
あなたが好きな花を見つめる横顔
その笑顔をもう一度向けてほしくて
心ない言葉をあなたはかけられてる
でもわかっているから
あなたが優しい人だということを

ごめんね あなたの荷物になってしまって
ごめんね あなたの望む人になれなかった
本当はもっと「ありがとう」を言いたい
私を産んでくれた人だから
もしも、生まれ変われるならば
またあなたの笑顔を見たい


鳴子の瞳から涙がこぼれていく。蘭がハンカチを差し出すと、鳴子は声を上げて泣き始めた。

「本当は互いに愛していた。でも言うことができなかったんですね」

圭介がそう言うと、鳴子は何度も「ごめんね」と言い始める。そこには我が子を愛する母親の姿があった。