最年少監察医である神楽蘭(かぐららん)は、勢いよく世界法医学研究所のドアを開ける。そこにはいつも冷静で無表情な女性はいなかった。真剣な顔を見て、落ち着きがどこかない。

「碧子先生!」

蘭は所長室のドアをノックもせずに開ける。突然開けられたドアに、世界法医学研究所の所長である紺野碧子(こんのあおこ)は驚き、仕事の手を止めた。蘭は碧子のデスクに近づき、頭を下げる。

「お願いします!今すぐにアメリカに行くことを許可してください!星夜さんが生きているのです!」

何度もお願いしますと繰り返す蘭に、碧子は「蘭ちゃん、少し落ち着いて」と蘭に駆け寄るが、蘭の表情はいつもの無表情に戻ることはなかった。

蘭の胸には、先ほどアメリカ人監察医のアーサー・スチュアートに言われた言葉が渦巻いていた。アメリカにずっと待ち続けた三国星夜(みくにせいや)が生きているのだ。冷静でいられるはずがない。

「神楽さん!落ち着きましょう」

「蘭!」