「なら夜景とか行く?」
「ありだね。道知らないけど。」
ハンバーグに切込みを入れて1口大にカットしながら麗華はカバンの中から携帯を取り出す。
「ここから10分くらいの場所でもいい?」
「いいよ?」
「ならそこにしよ。」
最初から麗華に対して優しそうと思ってたのは事実だけど。
車に乗り込んだ時のイメージは何となく冷たそうだなって思ったのもまた事実。
今は冷たそうだななんて思わない。
「麗華って優しいよね。」
「え?」
ハンバーグを食べながら麗華がキョトンとした顔をする。
「言われない?」
「言われたことない。
なぜなら私は自他共に認める無表情人間だから。
ロボットって言われた事もあるよ。」
ロボット?!
無表情なのは無表情だけど…
さっき笑ったところ見れたけど綺麗な顔が可愛くなってた。
少しドキってしたもん。
「会社でもロボットって言われるし今日も怖いって言われるし。」
こんな優しい人のどこが怖いんだ…
「まあ仕事の時以外でも基本笑わないからね。仕方ないよ。」
ふわっと微笑む麗華に怖いなんて想像できない。
「…仕事って…」
「ああ、社長秘書」
「え?!」
社長秘書って…めちゃすご…
「そして総務課社員。」
麗華の顔は無表情に戻っている。
「聞けば聞くほどすごい」
総務課ってハードなんじゃないのかな?
病弱なんじゃなかったっけ…
「…夜景見に行った時に聞きたいこと全部聞いたげる。
ここじゃ流石に無理。」
そういった麗華の綺麗な目はふんわりと微笑んでいた。

「ーおお、来たのは久しぶりだなあ…」
ご飯を食べ終わって車で約10分程。
麗華の車で夜景を見に来た。
「…麗華、あの…」
「……あー、教えたげる、なんて言ったけど実は大したことじゃないよ。」
フェンスに寄りかかった麗華は景色を堪能しながら続ける。
「初対面で話すことじゃないけどね。
私の姉、もう死んでる。」
あ、だから今はって言ったのか…
「今は7つ年下の妹がいるよ。」
「お姉さんは…なんで…」
「なんで亡くなったか?
病気だよ。
姉も私と一緒で病弱だったの。」
淡々と話しているけど辛い過去だよな。
…話させるべきじゃ、ない…
「麗華」
「?」
「辛いなら話さなくてもいいよ?」
「…ふっ、やっぱり優しいね。」
麗華の細い指が俺の髪に触れる。
顔にかかっていたのを退けてくれたらしい。
改めて見ると麗華は体格こそ普通だが手は小さく皮と骨だけなのか、って言いたくなる。
そしてちらっと見えたけど色が白い。
…まだどんな病気かは分からないけど…
【堀江将斗side END】