「用もないのに?」
「は?」
用もないのに会いに行っても迷惑じゃないのか?
「用ならあるだろ」
「?」
「お前今、彼女に会いたいんだろ?」
「うん」
「それが用だろ。」
…こいつは馬鹿で本当に馬鹿なことしかしてないけど。
今のはストンと俺の中に入ってきた。
「会いたいから会いに行く。
それが理由じゃん?用事じゃん?」
確かにそうだな。
会いたいから行く。
こんなにすんなり俺の中に入ってくるとは思ってなかった。
「ありがとう航。」
「いいってことよ。
あー俺も彼女欲しい〜」
空を見上げて俺はなんだかスッキリした気持ちになった。
そのまま携帯を手に取って麗華に電話をかける。
「…あっ、麗華…」
どうしても、キミに伝えたいことが山ほどあるんだ。
【堀江将斗side END】

【松原麗華side】
会社で仕事をしている時。
デスクの上に置いてあった携帯が震えた。
見ると将斗くんからの着信。
「…将斗くん…?」
丁度キリの良いところだったから私は1度デスクを離れて休憩所に入った。
「もしもし?」
『あっ、麗華、今大丈夫?』
「うん、大丈夫。何かあった?」
『会いたくて。』
…ん?
今日って確か成人式だったよね?
「…今から?」
『もちろん、都合が良ければなんだけど。』
都合が悪いこともない。
頼まれてた資料作りにきただけだから。
自主出勤して作るだけ作って帰るだけだ。
「んー…1時間くらい後でなら会えるけど…」
『今どこかにいるの?』
「会社。」
どうしても課長である私がやらないといけない仕事。
これが出来たら秘書課に提出すれば終わり。
秘書を通して社長に届く手筈になっているはずだ。
『待ってる。どうしても、会いたいんだ。』
「…わかった、すぐに終わらせて向かうから、待ってて。」
言うてあとは手直しをすればいいだけ。
下手すりゃ10分足らずで終わるだろう。
『いつもの駅でもいい?』
「わかった。いつも通りそっち向かうね。」
本当はあまり運転しちゃダメなんだけど。
会社まで運転できたし大丈夫だと思いたい。
『…待ってる。じゃあまた後で。』
「うん、また後で。」
携帯を耳から離して私は休憩所から出る。
「…あっ、松原さん」
「なんでしょう。」
…えーっと、確かこの人は…
営業の林さんだったかな?
「松原さんが教えてくださった取引先、契約出来ました!
松原さんが仰ってたとおりに話したらすんなり契約してくれて…」
林さんは確かうちの子会社から来たんだっけ。
そこでも営業やってたって聞いてるけど、まさか役立たずだとは思ってなかったよ。