「…なるべく早くしたいって言うのにはちょっと理由があるんだ。」
「ん?」
「ほら、私体弱いでしょ?」
…たしかに。
「子ども、産めるかどうか分からないの。」
だからなるべく早く産みたいのか…
「今の体力だと仮に妊娠したとして母子共にいられる確率は五分五分。」
…それって、麗華か子どもが選ぶってこと…
だよな…?
「将斗くんにだから言うね。
私はもし、どちらかって言われたら子どもを選んで欲しい。」
…子どもが好きだから、とか?
「子どもが好きだから、もあるんだけど、将斗くんにできるだけ多くの宝物を遺したいんだ。」
「…」
「私も、子どもも一緒にいられるように今体力作ってるところ。」
思っていたより深く考えてくれていたようだ。
「…でも、体力的には25までには産みたい。」
遠くを見つめて少し微笑みながら続けていく麗華。
「じゃあ25までに結婚しような。」
「ふふっ、気が早いよ」
…早いのかな?
麗華今21だったよな?
「俺、ちゃんとした男になるから…」
「うん」
「その時は結婚してね。」
「ふふっ、待ってる。」
麗華の小さな手が俺の頭に伸びてくる。
俺の髪を撫でてニコニコしている。

…絶対、立派な男になる。

麗華を守れるような。
大切な人を守りたい。
この笑顔をずっと向けていて欲しい。
「…さて、そろそろ帰ろうか。」
「上着はおるから待って。」
上着をはおり、シートベルトを締めて麗華に道案内。
「そこ右ね。」
「これ?
こんな道だったっけ?」
まあ、1度しか来たことないからな。
覚えてないのも仕方ない。
「じゃ、今日はありがと。」
車から降りようと思ったが何となく、麗華の真っ直ぐな笑顔を見た。
無性にキスしたくなってそのまま顔を近づけて触れるだけの口付け。
麗華は照れたのか反対側を向いてしまった。
すぐこちらに向き直ってニコッと微笑む。
「じゃ、ばいばい」
「またね」
麗華が助手席側の窓を開けてくれたから手を伸ばし麗華の手を握る。
本当に可愛らしく微笑んだ麗華は名残惜しそうに離すと車を少しずつ動かす。
手を振ると気持ちを切り替えたかのように車を発進。
…俺も早く家入ろう。
麗華の車の中が暖かったからか、俺の体は温もりを求めていた。
…今度会う時はどんなことをして笑顔にしよう。
大好きなあの笑顔、ずっと向けていてくれるようにはしないと。
【堀江将斗side END】