「でしたら…お願いします!」
「おっけー」
麗華の方を見ると柔らかく微笑んでいて。
「その方が麗華も嬉しいと思うし?」
「…そんなこと、ない。」
顔を見ると少し赤くなっている。
「じゃあ将斗くん、ご飯食べたらお風呂ね。」
「すみません、何から何まで…」
麗華の家族の温かさに涙が出そうになる。
きっとお父さんも優しい人なんだろうなあ…
「私の大きめサイズのジャージ持ってくるね。」
食べ終わった麗華は食器を流しに置き、リビングから出ていく。
パタン、と閉じられた扉を確認して麗華のお母さんは俺を見た。
「…将斗くん」
「はい?」
「あの子の、過去は聞いた?」
「はい。」
過去も含めて受け入れ、幸せにしたいと思ったんだ。
「聞いた上でお付き合いしてくれてるの?」
「はい。
聞いても尚、俺は彼女が好きです。」
麗華なら。
どんな麗華でも好きだ。
ずっと守り抜く。
ずっと俺の隣で笑っていて欲しいから。
「麗華の笑顔は、俺が守ります。」
「「…」」
麗華の妹さんとお母さんは真剣な顔から柔らかい笑顔になる。
「…ありがとう、麗華のこと、幸せにしてあげてね。」
「お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします。」
妹…流華さんもふわっと。
麗華とよく似た顔で微笑んだ。
【堀江将斗side END】

【松原麗華side】
…完全に入るタイミング逃した。
まさか私がいない時にそんな会話してると思わないじゃん。
終わるまでここで待機するか。
ーガチャ…
「うわっ、びっくりしたあ…」
「ああ、ごめんごめん。」
「聞いてた?」
リビングから1番に出てきたのは流華。
多分部屋で彼氏とイチャイチャ電話でもするんだろう。
「おまたせ。私の学生時代のジャージだけど、着れそう?」
背丈は若干私の方が低いってだけだから多分大丈夫だとは思うけど…
将斗くんのように筋肉が着いていないから少し不安だ。
「うん、多分着れる。」
「破れたら捨てるからいいよ。」
だってそれ高校の時のジャージだし。
殆ど着てなくて新品同様だったから持ってきただけ。
「お風呂、こっちだよ。」
リビングをぬけて、和室を横目にトイレの奥のお風呂。
和室の扉を閉め忘れていたから将斗くんの目に写ってしまった。
「あの写真の人って…お姉さん?」
「そうだよ。」
お姉ちゃんは亡くなった時のまま。
どちらかと言うと可愛い写真が遺影となっている。
「…こっちだよ。」
静かに和室の扉を閉めて私はお風呂まで案内した。