『大事にしすぎると痛い目見るよね。』
「…え?うん…」
『もうしばらく彼女いらないでしょ。』
「…えっ、いる」
『いるんかい。』
「麗華、ありがとう」
『なにが?』
「おかげで写真ほぼ全部消えた。」
話してる途中も消している指は止まらなかった。
…なぜかは分からない。
でも麗華には聞いて欲しかった。
それに、麗華とずっと一緒に居たくて。
元カノのことは忘れようと思った。
これからを麗華といたい。
だからもう、元カノのことは忘れる。
すぐには忘れられないけど俺の思い出からはもう、いらない。
「ねえ麗華…」
『ん?』
「惚れそう」
『何言ってるの。』
電話の向こうで少し笑った声が聞こえた。
…流されちゃったかな?
でも割と本気なんだけどなあ…
「だめ?」
『冗談でしょ。』
…どうしても本気になってくれないのかな?
「…惚れそうだよ?」
『…それは素敵な事だと思いますが?』
…もしちゃんと好きになったら、その時はちゃんと言うよ?
「麗華、好きになるかもだから覚悟してね。」
『え?』
大事にしたい子。
出会って数日なんて気にしない。
運命の子かもしれないんだ。
絶対、好きになる。
そんな気がした。
【堀江将斗side END】

【松原麗華side】
…惚れそう、だなんて…
冗談にも程があるよ。
「お姉ちゃん。」
「どうしたの流華。」
「彼氏とデート行ってくるわ。」
「…わざわざ私に言う意味とは?」
「お姉ちゃんもそろそろ彼氏作りなよ。」
…余計なお世話だよ。
私だって好きな人くらい…いるもん。
「久しぶりにお姉ちゃんが家にいる気がする。」
「うん。久しぶりに帰ってきた。」
適当にご飯を作って食べて妹を送り出す。
両親共に働いているから基本家には私たち姉妹のみ。
私の病院代でかなりかかっているからだろう。
…一応自分で払えるんだけどな。
「じゃあいってきまーす。」
「気をつけるんだよ。」
いつもより気合入ってるのか可愛い秋色ワンピース。
中には白いブラウスを着て甘めに仕上がってる。
髪は軽く巻いて編み込みをしてある。
…私が。
将斗くんとの会話を思い出しながら妹の準備をしてたらこうなってしまった。
コーディネートも全て私。
なかなかいいセンスだと思う。
「…さて、と…」
私はあまり活発には動けないから明日の仕事を少し片付けようかな。
パソコンを立ち上げて明日の会議で使う資料を作成する。
ーガチャ…バタン。
「ただいまー」
「おかえりなさい。お母さん。」
「麗華ー、久しぶり、体どう?」
「大丈夫。流華はデート行ってるよ。」
「麗華は何してたの?」
「明日の仕事で使う資料作成。」
「…真面目か。」
ため息をついて仕事着を脱ぎ捨てる母親。