それからの学生生活は楽なもんだった。
聴力障害が軽症になったことから保健室じゃなくても授業を聞けていたし。
相変わらず体力はなかったから体育は受けられなかったけど少しずつ動けるようになっていったし。
何より1番頼れる家族と会話出来ることが嬉しかった。
…でもやっぱり…
友達は、できなかった。
話しかけようとしてくれても怖くて逃げちゃって。
そのままズルズル大学まで引き摺ってやっとできた友達。
話してみたら好きな本、タイプ全部波長があって仲良くなった。
その子以外に仲良くなった子もいるけど、やっぱりその子が1番なんじゃないかな?
家族以外で初めて心を開けて話せる友達。
就職で離れてから会えてないけど、今は会社で多少しか話せなくて無表情人間とかロボットって言われちゃってるんだけど。
「…長くなっちゃったね。
これでもところどころ端折ったんだけど。」
仕事終わり。
私は将斗君と喫茶店でお茶していた。
初めて会った時はなかなか言い出せずにいた話をしようと思って。
…聞かせるべきではなかったかもしれない。
引かれてしまっただろうか。
【松原麗華side END】

【堀江将斗side】
まさか麗華にそんな過去があったとは…
無表情なのも最初からじゃなかった。
「…」
…なんて声をかけたらいいか分からない。
この沈黙で多分、麗華は引かれてしまったと思ってしまっているだろう。
…過去を話してくれたということは少しは信頼されてるのかな?
「なんで、俺に過去話してくれたの?」
「……?…あれ、なんで…?」
少し考えたものの答えは無い様子だ。
…もしかして俺の事好きになってくれたり…?
…はないか。
「…でも、何となく。
聞いて欲しくて…
いや、受け入れて欲しかった…?」
いつもズバッと言う麗華が考え込んでいる様子は中々珍しいことなのかもしれない。
「俺は、どんな麗華でも受け入れるよ!」
「…ふふっありがとう。」
…うん。
麗華は笑顔が似合う。
本来の性格は明るくて笑顔が沢山なんだろう。
猜疑心から笑顔を出せなくなっただけで元々は笑顔で溢れてるような子なんだ。
…俺が、笑わせたい。
笑顔にしたい。
「…うん、話したら案外大したことじゃなかったね。」
ニコッと笑う麗華に惹かれそうになる。
「優しすぎて惚れるかも?」
「welcomeですよ。」
「冗談よ。」
冗談か…
…ん?
なんで俺落ち込んでんの?
え?